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Chicaco的写真生活

「 Chicaco的写真生活 」 vol. 1

9月に開催した堂堂展に参加しました。小樽写真研究会のメンバーによる、年に一度、秋の合同写真展です。

今回は、ひとつのストーリーの中の時間の流れに沿って、写真を組み立ててみました。

am11:30→pm5:00

写真にキャピションを付けるのは、あまり好きではなかったけれど、特別な思い入れがあっての、試みです。




                                                                     

『 明るい土曜の午後・の・庭の記憶 』
- mother's garden -

dear mum

土曜日の下校は楽しかった。
家に着くのがもったいなくて、なるべくゆっくり時間をかけた。
よその家の軒先をぶらぶらと歩き、足下の-デイジーやキンレンカ-初夏の花
を眺めながら、庭の中を横断したり、土手の草を無意識にむしっては、道々に撒き
散らかし、手にしたすべてを発散させながら、歩いた。
家に着くまでの喜びを、ひとつひとつ頬ばりながら、…世界はおそらく見せかけの
平和に満ちて、水平線はまっすぐに、ぴたりと動きを止めているのに違いない。
太陽は頭のてっぺんにあり、灰色の影をカラダに吸い込み、一片の曇りも許さない。
なのに胸の中には不安が、なのに小さなひとつの芽を出し、私のシアワセを脅かし始める。
週末は終わりに向かい、すでに針を動かし始めているのだと…。

そうやって真昼の深みを漂いながら、ゆっくり、ゆっくり流れていった。
どのくらいの時が経ったのか。
目を覚ますと、回りは薄暗く、しだいに見えてくる景色はいつもの部屋の中だ。
枕元のアナログ時計の短針は数字の5を指している。
与えられる情報は何もなく、
この世で動くものはもはや、自分だけかもしれない…という恐怖。
孤独は大きくなるシミのようにあっという間に胸を支配する。

私は急いで電話を取った。
現実と自分を結ぶもの…。
早くしないと何かが、どこかに引きずり込もうとやって来てしまう。
もしもし…私は尋ねる。今は夕方なのか。それとも早朝なのか。
なのに相手は…電話の相手は笑って答える。
テレビを付けてごらんなさい。
夕方のニュースが映っているでしょう。
 
ブラウン管の中の、妙に明るいアナウンサーの声。
あぁ、よかった。
私の針が再び動き始める。
もしもし…。
あぁ、よかった。
世界はちゃんと存在している。

電話の相手はなおも笑っている。
もしもし…あぁ、よかった。

そしてあなたはそこに居る。
こんなにも長い長い道草をしたのに、
あなたはちゃんとそこに居る。
慣れ親しんだその声…。
もしもし…。
相手はなおも笑っている。
すでに夏の陽は…彼方だ。


【 写真・文 2008年堂堂展より】

by WATASHI-BRAND | 2008-10-10 22:56 | Chicaco的写真生活
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